「成形図説(せいけいずせつ)」に見る「にんにく」

江戸時代、薩摩藩が編纂した百科事典「成形図説」で「にんにく」の薬効、食べ方、食べ合わせ、食べるべき日に至るまで詳細に記載されています。当時全国的には食用として広まっていなかった「にんにく」ですが、薩摩藩ではとても重宝されていたことがわかります。また、薩摩藩は飢饉による餓死を防ぐため、にんにくの常食を推奨していました。














●「主治風水悪痒(あくよう)を除き蟲(むし)を殺す」


「嘔吐乾湿霍乱(おうとかんしつかくらん)已(やま)ざるに小蒜を煮て汁を服み、サイ中に灸すべし」 (意味)食あたりのような時は、にんにくの汁を飲んで、お灸をすべし。


●「中暑(あつけあたり)に大蒜(おおひる)一大弁(ひとへら)を嚼水(かみみず)にて送下(のみくだ)す、若(もし)嚼(かむ)こと能(なら)ずは水にて研汁(すりじる)を注ぎ飲む」 (意味)夏ばて対策として、にんにくをかじって水で飲む、若しかじることが出来ない場合は、すったにんにくを水で飲む。


●「疫病流行の時に家々大蒜のき下にかくる」 (意味)軒下ににんにくを下げることで、邪を払い、健康を祈願。

●「煮食えば穀を消す」 (意味)にんにくを煮て食べれば、穀物の食べる量を減らすことができる


※成形図説(せいけいずせつ)
本書は薩摩藩の博物書。25代藩主・島津重豪(しまづしげひで)の命により、勧農、救餓、済急のため、編纂されたものです。享和2(1802)に着手、文化元年(1804)までには100巻が編纂され、農事部、五穀部、疎菜部の30巻が上梓されました構想としては、農桑、五穀、から草木、鳥類にまでおよぶ大百科事典だったようです。当時の本草学進歩の跡をうかがい知ることができる資料です。特に,最重要部の農事は,江戸時代の農業技術及び慣行だけでなく,土地制度,租税,農事経済などについても記載されています。その内容は、和名の見出しに、漢名、オランダ名がそえられ、古文献からの引用で説明を展開するものです。

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